毎年夏と冬に、昭和42年に入社した同期12名のうち、集まれるメンバー7名で同期会を行っていた。それがコロナのせいで今年は集まれず、年の瀬に急遽リモートで行うことにしてズームで呼びかけたのだが、最初はなかなかつながらず、参加したのは4名だけ。

 76歳から78歳のメンバーだけに、健康やパソコン不慣れのせいで少人数になってしまった。しかし、ズームでの会話は規模としては4人ぐらいがちょうどよい。順番に一人が話して、相槌も打てるし、質問も混線せずスムーズに行えた。メールや電話ではなくて4人同時に顔を見ながら話ができるという臨場感があるし、ある程度元気かどうかが顔色や話し方でわかる。書斎でパソコンを開いている例が多く、バックには今まで蓄積した書物が見える。光線が不十分で画面が暗いものもあったが・・。

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 話す話題は、コロナ禍の中、毎日何をしているのだということが多いが、家族の変化もある。この年代になると家族が増えてうれしい話は孫の話題、減るという話題が最も悲しい。

 今後のリモート同期会は2~3か月に1度やることを決めた、価値あるリモート同期会だった。浅田次郎の「おもかげ」ではないが、人生の後半にさしかかっている私たち後期高齢者が語るこれからの話題は、きっと研修時代のこと、単身赴任のこと、独身時代や彼女との出会い、など楽しいことばかりでなく苦しかった時代の思い出が、走馬灯のように語られていくことだろう。

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 また、「今度生まれたら」(内館牧子)を読んでいると高齢者にはドキッとするものがあった。

 70歳になった佐川夏江は、夫の寝顔を見ながらつぶやいた。「今度生まれたら、この人とは結婚しない」。夫はエリートサラリーマンだったが、退職後は「蟻んこクラブ」という歩く会で楽しく余生を過ごしている。2人の息子は独立して、別々の道を歩んでいる。でも実は娘がほしかった。自分の人生を振り返ると節目々々で下してきた選択は本当にこれでよかったのか。進学は、仕事は、それぞれ別の道があったのではないか。やり直しのきかない年齢になって、夏江はそれでもやりたいことを始めようとあがく。2大ベストセラー『終わった人』『すぐ死ぬんだから』に続く小説!と頭から刺激的な紹介。

 男の同期会には、「今度生まれたら」という話題はでない。女性の夫を見る目が不満だらけなのはよくわかる。女性の目線だが、面白い記述が多いので拾い書きしてみる。

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エリート意識だけは強い。退職してからは彼に一目置く人がいなくなった。そのためか、私が持ち上げてやらないと不機嫌になる。(自分もそうだったかと反省)。

二人の息子たちは優秀で、結婚、孫の誕生など、夫と結婚すればこそ得た幸せだった。まさしくフルコースで、私はとても満腹感を覚えている。だが、満足感はない。70の今。

(果たして妻はこのような満腹感があるだろうか、それとも満足感を感じていないのだろうか、私は満足だが)

姉はブス。高校卒同士で結婚。今も仲良く金曜日には居酒屋で飲む。今度生まれても今の旦那と結婚するという。私たち夫婦よりあらゆる点で格下なのに、嫉妬もいじめもない。

(あまり過大な期待を相手に求めず、今がよい、これで十分と思うことが大事なのか)

昔話している時だけは、自分の一番良かった時代に戻れる。仕事の快感は自分が必要とされていること。自分がそうだとわかっている現役時代は、愚痴ったりぼやいたりも娯楽の一種。
(今の同期会は現役時代の余韻を感じながら話すこともあるが、定年から15年もたつとおぼろ気にしか思い出さない)

ボクサーが相手のパンチを受けないように避けていると、自分にパンチは当たらないが自分のパンチも相手に当たらない。パンチを当てて勝つためには前に出なければならない。

(現役時代に、果たして果敢にパンチを繰り出していたかは疑問だ)

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「白鳥になる夢も見し昔かな」「この人と結婚していなければ別の人生があったのではないか」人様々だが、若いころ見た夢を70になってからでは難しいと筆者は考える。

タイガーウッズは薬物と女で堕落した後、以前にはなかった冷静さと攻め方の知識をもって復活した。「人は蘇ることができる。ただし、かっての姿を追うのではなく、変身して」

あとがきに書いてあった、この二つの言葉は意味が深い。男と女の視点は違うが・・。

 定年後ゼロから新しいことを始めることは難しい。潜在的に持っている能力を生かす、それを世間への恩返しに使えればなお良い、ということは納得だ。

(写真は イギリス・ブリストル付近の渓谷つり橋とイングリッシュガーデン。また、本はマダムの間の回し読みを速読したもの)