ジュピターのブログ~令和徒然紀行~ 

旅(海外・国内)の写真と紀行文、日常のできごととエッセイと風景や花や自然の写真と書評

海外・国内旅行の写真と紀行文(10年以上のリスト)
エッセイと自然・花の写真
感動した本の紹介や日常の出来事の徒然紀行文

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新田次郎の「アルプスの谷 アルプスの村」紀行には、まだまだ素敵な描写が続く。

「滑らかな草原ツェルマットへ」では、「乾いた雨―こんなことばが頭に浮かんだ。ここではとにかく大気全般が乾いている。雨の中でも湿気をさほど感じない」とあったが、確かにスイスの雨と日本の雨とは違うようだ。

「電車が終着駅に着いた。駅前にはホテルの番頭が並んでいた。予約の客を馬車でホテルまで連れて行くのだ。」私たちが訪れた時も馬車ではなかったが、電気自動車でホテルまで連れて行ってもらった。排気ガスを避けているのだ。馬やヤギやシュタインボックのような動物にひかれる馬車も通りにあった。

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「石の巨人」では、「天気は次第に回復していったが、マッターホルンが見えてくるはずの方向には、雲が立ち込めていて、そう簡単には晴れそうにない。・・マッターホルンが姿を見せ始めた。ひどく、冷たい、大きな鉄のかたまりが雲の中に見えだしたという感じだった。まもなくその大容を私の前に見せた。大容は見せたが、肝心の顔は見せてはくれなかった」と頂が見えないもどかしさを表現していた。その点では、私たちはラッキーなことに、三度のスイス旅行ともにマッターホルンの朝焼け・モルゲンロートを完全に見ることができたのである。

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 「真夏の雪」では、「サンモリッツの町の裏側にあるピッツ・ナイ―ルへロープウエイで登ってみることにした。岩の頂に、カモシカらしいものが立っていた。鹿の隣が頂上の駅である。どうもおかしい。カモシカはわれわれの乗ったゴンドラが着いても、その位置をかえなかった。それはブロンズのカモシカだった」と像を生きた動物と間違えたことを書いていた。私たちも最初間違えたものだ。しかし、私たちは頂上の駅から散策をしていた時に、本物のシュタインボックを目の前に見ることができたのである。その時は感激し、近くまで行ってみようと、崩れそうな砂の斜面を登って写真を撮った。
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 目の前に実物のシュタインボックを見て大感激しているその時、妻の携帯が鳴った。なんという時の電話。長男の嫁からの電話だった。日本とスイスがこんなスイスの山の上でつながった。

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この本は昭和36年(1961年)の7月末に旅した時の旅紀行であるが、私たちが旅したのは2009年と2011年と2019年である。ということは、スイスの山の自然にはそれほどの変化はないということで、その美しさと自然が保たれていたということなのである。ただ、温暖化によって氷河の位置はかなり後退していて、気温上昇の影響はかなり大きいものがあることを肌で感じた。今日この頃の東京の気温の激しいアップダウンがそれを証明する。
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 昨年の桜の開花は3月20日前後、今年は3月29日にずれ込んだ。三寒四温の気温の激しさのせいらしい。
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庭に植えてある「モクレン」の花が咲いた。モクレンの開花期は3〜4月で、新葉が芽吹く前に花が満開になる。花色はピンクや、外側が赤紫で内側が白い複色など。6枚の花弁を持つ、チューリップに似た花径7〜10cmの大きな花が、枝から天に向かってまっすぐ立ち上がるのが特徴。我が家のモクレンは赤紫の花を咲かせてくれた。

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モクレンは、漢字で「木蓮」と書く通り、花がハスに似ていることに由来する。花の少ない早春から咲き、春の喜びをいち早く感じることのできるモクレン。

モクレンの花言葉は「自然の愛」「崇高」「持続性」

一般的にモクレン(木蓮)というと、紫色の木蓮(モクレン)をさすことが多く、樹高が1020mになる白いモクレンはハクモクレンと呼ばれている。ハクモクレンの見分け方は、色は白で直径は1015cm程度と3種類のなかで一番大きな花を咲かせる。チューリップのような咲き方の花を枝に上向きに咲かせるので花芯は見えない。

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ハクモクレンに似ているコブシの見分け方は、花径57cm程度の白い花を放射状に花びらを広げるように咲かせる。花びらの数は6枚。咲くと花芯が見える。

モクレンの英語名は、Japanese magnolia、ネイティヴはMagnoliaを使うそうだ。

コブシの英語名は、Magnolia Kobus

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そして、3月29日、開花が遅れていた東京の「ソメイヨシノ」が「モクレン」の開花と同時に、ようやく開花宣言。砧公園と散歩道と同時に咲いていた。午前中まで雨風が強かったが、午後になって晴れて、南風も加わり、上着もいらないほどの陽気の中で咲いたようだ。孫娘から預かっていたトイプードルも散歩に連れ出すと、嬉しそうに走り回っていた。
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  過去10年間にないほどの遅い開花と言う記録以上に、午前中の強い雨風の春嵐の後、午後になると20度に迫る暖かさと言う記憶に残るような、3月29日の開花宣言だった。同じように、荒れた春場所の尊富士の言葉「記憶に残りたい」が印象的だった。
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チューリッヒを出発した汽車は牧草地をぬけるとアルプスの山塊を登っていく。いきなり車窓に飛びこんできた巨大な岩壁のアイガー、朝日に全容を示した坐せる孤峰のマッターホルンをはじめ、人なつこい宿の主人シュトイリ氏、チナールの谷で逢った愛らしいベルギーの少女たちなど、憧れの土地で接した自然の風物と人情の機微を清々しい筆で捉えた紀行文。佐貫亦男氏の写真多数収録。とあった。

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 新田次郎の紀行文には、さすが作家らしく、旅した山やホテルや人の記述が文学的であった。私たちも定年後、スイスの旅は何度か経験したので、その感動を新田の文章で再確認できた。

「白銀の峰々」では「アイガーの岸壁を車窓から見上げた時は、おっかないような気がした。美しさというものはなく、威圧感だけであった」と記していた。私たちも、目の前にアイガー北壁が聳える「ホテルSpine」に泊まったので、その威圧感を十分に味わった。

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「ユングフラウヨッホに立つ」では、「クライネシャイデック駅。乗り換えである。そこはちょっとした広場になっていて、駅と大きなホテルがあった。ここが植物の限界点であった。ここから上は岩と氷以外に生物はないのだ。何かが動いている。牛だ。この辺は牧場の最高限界らしい。」とあった。私たちも牛のカウベルを聞き、乗り継いでウエンゲンに向かった。牛がのんびりと草を食む牧歌的な風景は、紀行文で描かれているように、ここが最高限界らしく、その限界風景を楽しむことができた。

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「ユングフラウヨッホ。そこは雪で覆われた山のいただきだった。周囲を見渡すと一面雪である。雪の道はあまり気持ちのよくない傾斜角度を持っていた。私は不思議な感じがした。頂上には柵がない。皆さんの生命は皆さん自身でお守りください。それがヨーロッパ人の考え方なのだ」という新田の感じ方については、私もそう思った。「危険!注意!」の旗はない。柵もない。それが美観を保っているように感じた。日本では、やたらと派手な幟や「危険」などの注意書きの看板が多く、景観を損なっている。(続く)
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